絽・紗など薄物の着用時期とTPO|夏着物の基本

TPOと着物の格

薄物は盛夏の着物として欠かせない存在です。

絽・紗・麻など素材ごとに涼やかな風合いがあり、着用時期や場面によって選び方が異なります。

本記事では、薄物の着用時期の目安とTPO別の使い分け、

礼装からカジュアルまでの装い方を解説します。

薄物の種類や素材ごとの特徴、帯・小物の合わせ方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
涼しげに着る薄物着物|種類と帯・小物選びのヒント

🔶薄物の着用時期の目安

薄物は、一般的に6月下旬から9月初旬までが着用の目安です。

ただし、地域や気候によって前後します。

例えば、関東では7月〜8月を中心に用いられますが、

暑さの厳しい地域では6月中旬から着始めることもあります。

単衣から薄物へは、気温が25度を超える頃が切り替えのタイミングとされています。


▶薄物と素材別の着用時期(目安)※地域や気候により前後します。







🔶TPOに応じた薄物の選び方

素材や織りの特徴、帯や小物の合わせ方をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
涼しげに着る薄物着物|種類と帯・小物選びのヒント

礼装には絽訪問着や絽縮緬、紗袷など、格式を保ちながらも涼感を演出できる素材がおすすめです。

略礼装や外出着には絽小紋、夏大島、夏紬などが適しています。

カジュアルには麻や木綿の薄物が便利で、涼しさと動きやすさを兼ね備えています。

帯や小物も夏仕様を合わせることで、全体の調和が取れます。


▶フォーマルな場(礼装

項目内容
場所・場面結婚式(盛夏)、公式行事、茶会、格式あるパーティー
着物の種類絽訪問着、絽縮緬、紗袷
帯・小物絽袋帯、夏織り袋帯、絽や紗の帯揚げ・帯締め

夏のフォーマルな場面には「絽(ろ)」の着物を

盛夏のフォーマルシーンでは、涼やかさと格式を兼ね備えた「絽」の着物が基本です。
特に既婚女性の第一礼装である黒紋付き(喪服)は、長く「絽」の生地で仕立てられ、夏の公式な場にふさわしい装いとして定着してきました。

かつては娘の結婚に際し、黒紋付き(喪服)を一式誂え、嫁入り道具として用意する習慣もありました。
この生地として選ばれるのが「絽」であり、現在でも夏の結婚式や公式行事、格式ある席で広く用いられています。


💡 補足:昔と今の絽縮緬礼装事情
以前は盛夏の留袖や色留袖、訪問着などの礼装に絽縮緬が使われることも多く、涼感と格式を兼ね備えた極上の素材として重宝されていました。
しかし近年では、式場やホテルの空調設備が整っていることから、盛夏でも絽の黒留袖や訪問着が主流となり、絽縮緬の礼装はほとんど見かけなくなっています。


▶セミフォーマル〜お出かけ(略礼装〜外出着)

項目内容
場所・場面観劇、ホテルでの会食、趣味の集まり、同窓会
着物の種類絽小紋、夏大島、夏紬
帯・小物絽名古屋帯、夏九寸名古屋帯、無地や淡色の半襟

紗・麻の着物とフォーマル度の関係

観劇やホテルでの会食、同窓会などの場には、紗小紋や夏大島、夏紬などが適しています。

ただし、紗の着物は絽よりも透け感が強く

フォーマル度の高い式典や公式行事には不向きとされます。

そのため、結婚式の二次会やホテルでのランチといった、

ややくだけたセミフォーマルの場で、落ち着いた色合いのものを選ぶと良いでしょう。

また、麻の着物は上質なものもありますが、基本的には普段着のカテゴリーに入ります。

盛夏のカジュアルなお出かけに最適で、軽やかさと涼しさを楽しめます。


▶カジュアル(普段着)

項目内容
場所・場面夏祭り、花火大会、美術館巡り、街歩き
着物の種類麻(近江ちぢみなど)、木綿の薄物、上布
帯・小物羅の半幅帯、麻の名古屋帯、かごバッグや麻素材の日傘

麻の着物(上布を含む)

麻は通気性・吸水性・速乾性に優れ、盛夏に最適な素材です。

軽やかな着心地と涼しさが魅力で、男女問わず人気があります。

特に上布は麻織物の一種で、越後上布や宮古上布など、

きめ細やかな光沢と風合いが魅力の高級品です。

ただし麻の着物は木綿と同様に普段着に分類され、フォーマルな場には不向きですが、

普段のおしゃれ着や夏のお出かけにはぴったりです。

さらりと涼やかに着こなせます。


🔶礼装での薄物の着用シーン

夏の式典や結婚式、茶会などでは、盛夏でも礼を尽くした装いが求められます。

絽訪問着や紗袷は、上品な透け感と格式を備えており、

夏袋帯や絽綴れ帯と組み合わせると一層格調高く仕上がります。

小物は白系や淡色を選び、涼やかな印象を与えると良いでしょう。

絽の五つ紋付き留袖に袋帯を合わせた夏の礼装。通気性があり涼やかな生地で、盛夏の結婚式や公式行事にふさわしい装いです。


盛夏にふさわしい薄物の訪問着。絽の生地を用い、通気性と軽やかさを兼ね備えています。お茶会や夏の公式行事など、涼やかさと格式を求められる場に適した装いです。


🔶カジュアルな薄物の楽しみ方

観劇や食事、美術館巡りなど、日常の外出には夏紬や麻の着物が最適です。

帯は半幅帯や博多帯など軽やかなものを合わせると、動きやすく快適です。

帯留めや扇子など、夏ならではの小物を添えることで、季節感と遊び心を演出できます。

盛夏に涼やかさを添える、上布のきもの。軽やかな風合いと上品な光沢が魅力です

盛夏に映える、軽やかで涼やかな夏大島の装い。

🔶薄物と浴衣の違い

浴衣は本来、湯上がり着として使われてきましたが、近年では外出着としても定着しています。

一方、薄物は下着や足袋を着用し、帯も名古屋帯や袋帯などを合わせるのが基本です。

浴衣はカジュアルな場面に限られますが、

薄物は礼装からカジュアルまで幅広い場面で着用できます。


柔らかな生成り色に植物柄が映える、上品で涼やかな浴衣姿です。

淡い水色に秋草の模様が映える、涼やかで品格ある絽の付け下げです。

項目浴衣薄物
着用時期・場面夏限定。祭りや花火大会などカジュアルな場面夏の盛り。観劇や美術館巡りなど日常の外出にも適し、ややフォーマル寄りも可能
着方下着の上に直接羽織り、帯を締める。足元は下駄が多い肌襦袢・長襦袢を着てから羽織り、帯を締める。足袋と草履が多い
素材綿や麻など通気性の良い素材麻(上布)や絹、木綿の薄物など
最もカジュアルな和装種類によってカジュアル〜フォーマルまで幅広い
帯・小物半幅帯が一般的羅や麻素材の名古屋帯、かごバッグや麻の日傘など

🔶まとめ

絽や紗などの薄物は、盛夏ならではの涼感と季節感を演出できる夏着物です。

素材や織り方によって格が異なり、礼装からカジュアルまで幅広い場面に対応できます。

着用する時期やTPOを正しく理解し、帯や小物も夏仕様に整えることで、

見た目も着心地も快適な装いが完成します。

夏の和装を楽しむために、薄物ならではの魅力と使い分けを押さえておきましょう。

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