「この着物、どこに着ていけるの?」と迷ったことはありませんか?
着物には「格(フォーマル度)」があり、場面によって適した種類やコーディネートが異なります。
本記事では、着物のTPOと格を初心者にもわかりやすく一覧でご紹介します。
フォーマルからカジュアルまで、着物選びの基本をしっかり押さえていきましょう。
🔶着物の「格」とは?
「格」とは、着物の“フォーマル度”を表すものです。
たとえば、結婚式や式典などの正式な場では第一礼装が求められ、 一方で日常的なお出かけや観劇などの場では、カジュアルな着物でOKです。
着物の格は、次の3つの要素で構成されます:
- 着物の種類(振袖、訪問着、小紋など)
- 紋の数(5つ紋、3つ紋、1つ紋、なし)
- 帯や小物(袋帯、半幅帯、草履の種類など)
この3要素の組み合わせでTPOに合った「格」が完成します。
▶補足:素材や技法によっても“格”の印象は変わる
着物の「格」は形式や紋・帯だけでなく、素材や技法によっても印象が大きく変わります。
着物は「染め」が上位、「織り」がカジュアル寄り
→ たとえば、訪問着や付け下げなどの「染めの着物」はフォーマル感が高く、
対して紬やお召など「織りの着物」はカジュアルに分類されます。
帯は逆に「織り」が上位、「染め」がカジュアル寄り
→ 袋帯などの織り帯は格が高く、セミフォーマル〜フォーマルに使用され、
染め帯(染め名古屋など)はカジュアル向けの帯として楽しまれます。
💡つまり、「着物と帯では“格の基準”が逆になる」ことに注意が必要です。
🔶着物のTPO早見表
格 | 男性の着物例 | 女性の着物例 |
---|---|---|
礼装 | ・黒羽二重 五つ紋付き |
・花嫁衣裳 ・本振袖 ・黒留袖 ・色留袖 ・喪服 |
略礼装 |
・色羽二重紋綸子 五つ紋付き(羽織付き) ・お召無地 一つ紋付き(羽織付き) ・紬無地 一つ紋付き(羽織付き) ・絽・紗 一つ紋付き(羽織付き) |
・振袖 ・色留袖(三つ紋以下) ・訪問着 ・色無地(一つ紋以上) ・江戸小紋(三つ紋) ・付け下げ |
外出着 |
・お召(羽織付き) ・紬(羽織付き) ・ウール(羽織付き) ・夏大島 ・上布 |
・付け下げ ・江戸小紋 ・色無地(紋なし) ・小紋 ・お召 ・紬 |
街着・普段着 |
・お召(羽織付き) ・ウール(羽織付き) ・浴衣 ・縮 ・絽 |
・小紋 ・お召 ・紬 ・ウール ・浴衣 |
【補足1】着用シーン(TPO)の目安について
※この表は、一般的なTPOに応じた着物の「格(フォーマル度)」をまとめたものです。
たとえば…
- 礼装:結婚式・式典・成人式など
- 略礼装:入卒式・パーティー・正式なお呼ばれ
- 外出着:観劇・会食・ちょっとした集まり
- 街着・普段着:お買い物・カフェ・夏祭り(浴衣)など
【補足2】格を調整できる着物について
※訪問着・色無地・江戸小紋・付け下げ などは、帯や小物の選び方でフォーマルにもカジュアルにも使える着物です。
たとえば「色無地に袋帯+一つ紋」で略礼装に、「名古屋帯+紋なし」で街着に…と、TPOに合わせて柔軟に調整できます。
【補足3】男性の羽織について
※男性の着物では、「羽織(はおり)」を着用することで、より改まった印象になります。
セミフォーマル以上では「羽織あり」が基本とされ、TPOに応じてコーディネートされます。
🔶フォーマル・セミフォーマル・カジュアルの違い
着物にはTPOに応じた「格(フォーマル度)」があり、
大きく分けて【フォーマル】【セミフォーマル(略礼装)】【カジュアル】の3段階があります。
それぞれのレベルに応じて選ぶ着物の種類が変わり、
帯や小物を合わせて全体の格を整えるのがポイントです。
▶フォーマル(第一礼装)
結婚式や公式行事、格式高い場で着用される装いです。
女性は紋入りの留袖や振袖、男性は黒羽二重五つ紋付き羽織袴などが基本です。
【男性の例】
黒羽二重 五つ紋付き(羽織袴)
【女性の例】
花嫁衣裳(白無垢・色打掛など)
本振袖(未婚女性の第一礼装)
黒留袖(既婚女性の礼装)
色留袖(五つ紋)
喪服(黒無地五つ紋)


黒羽二重五つ紋付き(羽織袴)
格式ある第一礼装で、結婚式や公式行事に着用される男性の正装になります。
花嫁衣裳(左)・本振袖(右)
- 花嫁衣裳は、豪華な刺繍と華やかな配色が特徴の婚礼衣裳。披露宴などの場でも映える格式高い装いです。
- 本振袖は未婚女性の第一礼装。成人式や結婚式など、晴れの日にふさわしい華やかさを持っています。
▶セミフォーマル・略礼装
パーティー・入学卒業式・お呼ばれの席など、少しかしこまった場面で着られる着物です。
色や柄が豊富で、帯や小物で印象が変わるのも魅力です。
【男性の例】
色羽二重・綸子 五つ紋付き(羽織あり)
お召 無地 一つ紋付き(羽織あり)
紬 無地 一つ紋付き(羽織あり)
絽・紗など夏素材の一つ紋付き(羽織あり)
【女性の例】
振袖(成人式・披露宴など)
色留袖(三つ紋以下)
訪問着
付け下げ
色無地(一つ紋以上)
江戸小紋(三つ紋)


色紋付・羽織袴
男性のセミフォーマルとされます。結婚式や公式な場で着用され、家紋入りの羽織が特徴です。
振袖・色無地
左は未婚女性のセミフォーマル・振袖。右は控えめながら品格のある色無地で、式典や茶席にも適した装いです。
▶カジュアル(外出着・街着)
普段の外出や観劇、カフェなどの気軽なお出かけにぴったりです。
紋なしの小紋や紬、浴衣など、着こなしに自由度があります。
【男性の例】
お召(羽織付き)
紬(羽織付き)
ウール(羽織付き)
夏大島・上布
浴衣
【女性の例】
小紋(普段のおしゃれ着)
お召
紬
ウール
浴衣(夏祭り・花火大会など)


紬のアンサンブル・浴衣
左は紬のアンサンブルで、街着やカジュアルな外出に適した装い。右は浴衣で、夏祭りや温泉などに気軽に楽しめます。
小紋・浴衣
左は日常のおしゃれ着として人気の小紋、右は夏の風物詩・浴衣。どちらもカジュアルなシーンにぴったりの装いです。
🔶同じ着物でも格が変わる?帯や小物の組み合わせ例
着物の種類が同じでも、帯や小物の選び方で“格”は大きく変わります。
特に「色無地」や「付け下げ」などは、TPOに合わせた調整がしやすく、初心者にもおすすめです。
■セミフォーマル


■カジュアル


帯の種類 | 小物 | 着物の印象(格) | 用途例 |
---|---|---|---|
袋帯 | 正絹の帯揚げ・帯締め(白系) | セミフォーマル〜フォーマル | 結婚式のお呼ばれ、入卒式など |
名古屋帯(染) | カジュアルな色柄 | おしゃれ着/カジュアル | 食事会、観劇、街歩きなど |
半幅帯 | 絞り・木綿など | 普段着寄り | カフェ、散策、稽古事など |
💡ポイント
- 帯の「織 or 染め」でフォーマル度が変化します。
→ 着物と逆で「織」が格上、「染め」が格下になります。 - 小物(帯揚げ・帯締め)の素材や色でも印象が変わります。
→ 白・銀・正絹などは改まった印象になります。
🔶迷ったときの選び方・失敗しない考え方
着物のTPOに迷ったときは、
「フォーマルすぎず、失礼にならない」ことを意識するのがポイントです。
格式が求められる場面では、略礼装をベースに、帯や小物で格を調整する着こなしがおすすめです。
たとえば、
- あらたまった食事会や同窓会には「一つ紋の色無地+名古屋帯」
- 観劇や茶道のお稽古など趣味の場では「江戸小紋+半幅帯」
- カフェや街歩き、お買い物には「小紋や紬+カジュアルな帯」
といったように、「場所・相手・目的」の三つを基準にすると判断しやすくなります。
また、同じ着物でも帯や小物の合わせ方によって、格を上げたり下げたりすることができます。
略礼装からカジュアルまでの着物を上手に活用すれば、コーディネートの幅がぐんと広がります。
💡迷ったときは、「少し控えめ」な格にしておくと安心ですし、
格式ばった装いは、場の雰囲気によっては浮いてしまうこともあるため、バランスが大切です。
🔶まとめ|TPOと格を知ることで、着物がもっと楽しくなる
着物には、フォーマルからカジュアルまでさまざまな“格”があり、
それぞれにふさわしい場面があります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、
基本を知っておくことで「どんな着物を、どこに着ていけばいいのか」が自然と見えてきます。
また、同じ着物でも、帯や小物の選び方によって格を調整できるのが和装の面白さです。
シーンに合わせて自由にコーディネートできるからこそ、
着物はもっと楽しく、身近な存在になります。
TPOと格を知ることは、和装をより深く楽しむための第一歩になります。
これからも季節やシーンに合わせた着物の魅力を、一緒に楽しんでいきましょう。