9月は単衣と薄物の切り替え月。
気温とTPOに合わせた目安と、フォーマル〜カジュアルのコーデ例をまとめました。
👉 薄物の種類や帯・小物選びについて詳しく知りたい方は、
関連記事『涼しげに着る薄物着物|種類と帯・小物選びのヒント』もあわせてご覧ください。
🔶9月の着物の基本
9月は夏の暑さが徐々に和らぎ、単衣へと衣替えするのに最適な時期です。
なかでも「秋単衣」は、涼やかな色合いや秋らしい草花柄が映え、
細やかな模様が季節感をより引き立てます。
**単衣(ひとえ)**
単衣は裏地のない一枚仕立ての着物で、主に6月と9月に着用します。
6月に着るものは「春単衣」、9月に着るものは「秋単衣」と呼ばれます。
秋単衣は、色柄や素材に秋らしさを取り入れるのが特徴で、
盛夏の涼やかさから徐々に季節感を深めていく役割があります。
生地は袷よりも軽く、透け感のある薄物よりもしっかりしているため、季節の変わり目に快適に着られます。
素材には紬や縮緬、小紋、色無地などがあり、帯や小物で季節感を調整できます。
特に9月の単衣は、暑さが残る日には涼しげな色を、
秋らしさを出したい場面では深みのある色を選ぶなど、気温やTPOに応じた工夫がしやすいのも魅力です。
単衣(ひとえ)のポイント
- 裏地のない一枚仕立ての着物で、主に6月と9月に着用
- 6月は「春単衣」、9月は「秋単衣」と呼び、色柄や素材で季節感を調整
- 生地は袷より軽く、薄物よりもしっかりしていて季節の変わり目に快適
- 紬、縮緬、小紋、色無地など幅広い素材が使われる
- 帯や小物で季節感を演出(9月の暑い日は涼しげな色、秋らしさを出す日は深みのある色)
**薄物(うすもの)**
薄物は、絽や紗など夏用の透け感のある素材を使った着物で、主に7月・8月に着用します。
9月上旬の残暑が厳しい時期には、涼しさを優先して薄物を選んでも構いません。
薄物の着用時期やTPOについては「絽・紗など薄物の着用時期とTPO|夏着物の基本」、種類や帯・小物選びのポイントについては「涼しげに着る薄物着物|種類と帯・小物選びのヒント」で詳しく解説しています。
目安としては、9月上旬は薄物、中旬以降は単衣が基本ですが、気温やTPOに合わせて柔軟に対応しましょう。
🔶TPOに応じた着物の選び方
9月は季節の変わり目で、気温や場面によって適した着物が変わります。
フォーマルからカジュアル、茶道などの特別な行事まで、
それぞれのTPOに合わせた装いを選ぶことで、快適さと季節感の両方を楽しめます。
▶フォーマルな場
9月1日からは単衣を着用するのが一般的です。
式典や公式行事など改まった場では、透け感のある薄物は避け、
季節感と格式を備えた秋単衣を選びましょう。
▶カジュアルな場
残暑が厳しい場合は、透け感のある薄物でも構いません。
街歩きや友人との食事、気軽な集まりなど、リラックスした雰囲気の場におすすめです。
▶茶道・特別な行事
9月9日の重陽の節句までは、薄物を着ることもあります。
特に茶席では、季節感を大切にした装いが求められるため、
帯や小物で秋らしさを取り入れるとより好印象です。
🔶9月の着物コーディネート例
9月は季節の変わり目で、日中は暑さが残る一方、朝晩は涼しさを感じます。
そのため「単衣」と「薄物」を上手に切り替えながら、
快適さと季節感を両立するコーディネートが求められます。
TPOに合わせて選ぶことで、装いに品格が加わり、9月ならではの着物姿を楽しめます。
🔸薄物コーディネート
▶フォーマル
⦿絽の訪問着
涼やかな訪問着に夏袋帯を合わせ、格調を保ちながら残暑を軽やかに演出。
涼やかな絽の訪問着や付け下げが適しています。帯は夏袋帯を合わせ、格調を保ちながら残暑にふさわしい軽やかさを演出します。帯揚げや帯締めも白や淡い色合いを選ぶと、清涼感が引き立ちます。


絽の訪問着に夏袋帯を合わせた涼やかな装い
淡い色調の訪問着で清涼感を演出
▶セミフォーマル
⦿一つ紋入り色無地
色無地に夏袋帯を合わせた上品な装い。背に一つ紋を入れると、改まった場にもふさわしくなります。
絽の色無地に、白地の夏名古屋帯を合わせた上品な装いです。背に一つ紋を入れることで、改まった場にもふさわしい雰囲気になります。お茶席や小規模な式典などに最適です。落ち着いた色合いに淡い小物を添えることで、初秋らしい端正な印象が生まれます。


色無地に白地の夏名古屋帯で上品に
一つ紋を入れて、改まった席にもふさわしく
▶カジュアル
⦿9月上旬
麻の着物に淡色の帯を合わせた、残暑に涼やかな装い。
⦿9月中旬~下旬
夏大島に深みのある小物を添えた、秋を感じる装い。
夏大島や麻の着物に、羅や紗の半幅帯を合わせた装いが心地よいです。近所のお出かけや気軽な食事会にぴったりで、帯留めや根付けに遊び心を加えると、残暑を楽しむ粋な着こなしになります。


麻の着物に淡色の帯で、残暑を涼やかに
夏大島に深みのある小物で秋を先取り
🔸単衣コーディネート
▶フォーマル
⦿単衣の訪問着
淡い色調の単衣訪問着に袋帯を合わせ、上品で涼やかな印象に。格式を守りながらも軽やかにまとえる装いです。
単衣の訪問着や付け下げを選び、格調ある袋帯を合わせると、秋の行事やお茶会にふさわしい装いになります。


淡いグリーンの訪問着で華やかに
グレーの訪問着で落ち着いた装い
▶セミフォーマル
⦿鮫江戸小紋
淡い色調の鮫江戸小紋に袋帯を合わせ、上品で涼やかな印象に。格式を守りながらも軽やかにまとえる装いです。
江戸小紋や色無地の単衣に、袋帯を合わせると上品な雰囲気に仕上がります。ビジネスシーンや改まった食事会にも対応でき、帯小物でシックな秋色を加えると季節感が出ます。


絽袋帯で涼やかにまとめた江戸小紋
格調を添える袋帯で改まった装い
※江戸小紋について
江戸小紋は「格の幅が広い」着物として知られ、単衣仕立てで一枚持っていると重宝します。特に鮫・行儀・角通しなど「三役」と呼ばれる柄は、紋を入れることで改まった場にも対応可能です。
セミフォーマルな場面では、金糸や銀糸を用いた袋帯を合わせれば華やかに、お祝いの席や茶会には九寸名古屋帯で上品にまとめることもできます。柄や帯合わせによって幅広いシーンに対応できるのが魅力です。
▶カジュアル
⦿紬と単衣小紋の着物
日常や街歩きに。単衣小紋や紬の着物で季節感を楽しむ装い。
紬や木綿の単衣に、名古屋帯や半幅帯を合わせると、街歩きや観劇にちょうど良い装いになります。秋の始まりを意識して、帯や小物に葡萄色・からし色などを取り入れると落ち着いた印象になります。


紬の着物に赤い半幅帯を合わせて軽快に
単衣小紋にシンプルな帯を合わせて爽やかに
🔶その他のポイント
▶体調や気温に合わせた無理のない着物選び
単衣の季節は5月~6月、9月とされていますが、
実際にはその年の気候やご自身の体調によって柔軟に調整することが大切です。
暑さが厳しい日は、無理に季節の決まりに従うよりも、
快適さを優先した方が長時間心地よく過ごせます。
特に残暑の厳しい9月は、透け感のある素材や涼やかな色合いを取り入れると過ごしやすくなります。
単衣の季節は5〜6月・9月が目安
気候や体調に合わせて柔軟に調整することが大切
暑い日は快適さを優先して選ぶと安心
残暑の9月は透け感素材や涼やかな色合いが活躍
▶改まった場やお茶席での工夫
フォーマルな場やお茶席では、季節の移ろいを意識した装いが好印象につながります。
例えば、初夏なら水辺や新緑を思わせる涼しげな文様、
秋口には紅葉や菊など季節感を取り入れた帯や小物を合わせると上品です。
帯締めや帯揚げを季節の色に変えるだけでも印象は大きく変わります。
季節の文様や色を意識すると上品な印象に
帯揚げ・帯締めを季節の色に変えるだけでも雰囲気UP
初夏は水辺や新緑、秋口は紅葉や菊などのモチーフがおすすめ
▶高機能素材「セオアルファ」の活用
最近人気を集めているのが、東レが開発した「セオアルファ」という高機能素材です。
吸汗速乾性に優れており、汗をかいてもべたつかず、すぐに乾くため夏場に最適。
しかもシワになりにくく、自宅で洗濯できる点も魅力です。
見た目は絹のように自然で、単衣や夏物として幅広く着用できるため、
特に残暑の厳しい時期にはとても重宝します。
旅行や長時間の外出にも適しており、初心者からベテランまで幅広い層に支持されています。
吸汗速乾で汗をかいても快適
シワになりにくく、自宅で洗える
見た目は絹のように自然で、残暑や旅行にも便利
🔶よくある質問(FAQ)
Q. 9月は単衣と薄物、どちらを着ればいいですか?
A. 残暑が厳しい9月上旬は薄物も許されますが、中旬以降は単衣が基本です。フォーマルな場では早めに単衣に切り替えると安心です。
Q. 茶席など格式のある場ではどうしたらいいですか?
A. 茶席では重陽の節句(9月9日)までは薄物も可とされます。ただし、帯や帯揚げ・帯締めで秋らしさを演出することが大切です。
Q. 普段着としてはどんな工夫をすればいいですか?
A. 木綿や紬の単衣を取り入れると過ごしやすく、帯や小物で秋色を加えると季節感が出ます。暑さが残る日は麻や薄物も活用できます。
🔶まとめ
単衣の着物は、季節の決まりだけでなく気温や体調に合わせて柔軟に楽しむことが大切です。
改まった場では季節感を意識した帯や小物を取り入れると上品に見え、
日常では快適さを優先することで長く心地よく過ごせます。
近年は吸汗速乾性に優れたセオアルファなど高機能素材も人気で、残暑の季節に重宝します。
自分らしさと快適さを両立させた着物選びを心がけましょう。
9月は単衣と薄物を上手に使い分けることで、快適に過ごしながら季節感を演出できます。
👉 薄物の種類や小物合わせについては、
関連記事『涼しげに着る薄物着物|種類と帯・小物選びのヒント』で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。