実りの秋、紅葉の季節。
過ごしやすい気候となるこの時期は、着物でのお出かけがいっそう楽しくなる季節です。
「今年は秋の行楽に着物で出かけてみようかな」そんな気分になっていませんか?
あるいは「七五三のお祝い、どんな着物を着ればいいの?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、秋の着物選びの基本から、行楽や七五三にふさわしいコーディネート例、そして季節感を引き立てる小物使いまでをまとめてご紹介します。
秋の着物コーディネートの基本:季節感を取り入れるポイント

秋は単衣から袷へと衣替えが進み、深みのある色や豊かな柄が映える季節です。
着物選びの基本を押さえておくと、行楽や七五三といった場面でも安心して装えます。
素材・色柄・小物の工夫で、季節感あふれるおしゃれを楽しみましょう。
素材の選び方:単衣から袷への移り変わり
秋は、着物の衣替えがちょうど進む季節です。
- 9月前半〜後半:まだ暑さが残る時期は「単衣(ひとえ)」や「薄物(うすもの)」が活躍します。さらりとした着心地で、汗ばむ日でも快適。
- 10月以降:気温が下がってくると「袷(あわせ)」に切り替わります。裏地がついて暖かみがあり、秋らしい落ち着いた雰囲気を演出できます。
素材は縮緬(ちりめん)、紬(つむぎ)、お召しなどが代表的です。
縮緬は柔らかく華やか、紬はカジュアルで温かみがあり、お召しはしっかりとした質感で改まった場にも合います。
シーンや行事に合わせて選ぶと安心です。
秋にふさわしい色柄
秋の着物コーディネートでは、自然を映した色や柄を取り入れると季節感がぐっと高まります。
ポイント | 具体例 | 特徴・イメージ |
---|---|---|
色 | 柿色、えんじ、からし色、抹茶色、深緑、こげ茶、グレー | 暖かみや深みがあり、秋らしい落ち着いた雰囲気を演出 |
柄 | 紅葉、菊、葡萄(ぶどう)、栗、萩、秋草、虫の声 | 季節感を強調し、上品で華やかな印象に |
シンプル派 | 無地、江戸小紋 | 帯や小物で秋色を差し込み、さりげなく季節感を演出 |
季節ごとの柄や文様をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
[秋の着物柄と文様まとめ|9月・10月・11月に楽しむ季節模様]
帯と小物の選び方:調和とアクセント
着物の印象を大きく左右するのが帯まわりの小物です。色や素材に秋らしさを取り入れることで、ぐっと季節感のあるコーディネートになります。
▶帯締め
秋は、えんじ・からし色・深緑など、自然を思わせる落ち着いた色がよく映えます。一本入れるだけで全体の印象が引き締まり、季節感もアップ。組紐の素材感を活かすと、装いに立体感が出ます。
▶帯揚げ
縮緬(ちりめん)など秋らしい風合いの素材がおすすめ。柿色やワイン色を選ぶと、落ち着いた雰囲気の中に華やかさを添えられます。帯揚げは着物と帯をやさしくつなぐ役割もあるので、色味を調和させつつアクセントを意識しましょう。
▶羽織・ショール
朝晩が冷え込む季節には、防寒も兼ねて羽織やショールが大活躍。無地の羽織を秋色にすれば、着物と帯を引き立てながら季節感を演出できます。軽やかなショールを肩に掛けるだけでも雰囲気が変わります。
▶草履・バッグ
小物全体をまとめる仕上げ役。茶やグレーなど落ち着いた色合いを選ぶと、秋の深まりを感じる着こなしに。素材感のあるものを取り入れると、より季節感が際立ちます。
【TPO別】秋のおすすめ着物コーディネート例

秋は過ごしやすく、着物でのお出かけにぴったりの季節です。ここでは、行楽や七五三といったシーンごとのおすすめコーディネートを紹介します。
秋の行楽・お出かけスタイル
紅葉狩りや美術館巡り、友人とのランチなど、秋は着物で気軽にお出かけできるチャンスが豊富です。
▶紅葉狩り・散策に
紬や小紋、木綿など動きやすく扱いやすい着物がおすすめ。名古屋帯や半幅帯で軽やかにまとめれば、歩きやすさも抜群です。


▶美術館や観劇、ランチに
小紋や色無地、江戸小紋を選ぶと少し改まった雰囲気に。名古屋帯や軽めの袋帯を合わせれば、上品さを添えられます。


▶快適に過ごす工夫
秋口は日中と夜で気温差があるため、羽織やショールを持ち歩くと安心。薄手の羽織を重ねるだけで季節感もプラスされます。


七五三のお祝いスタイル
七五三では祖母も一緒に写真に写ることが多いため、落ち着きと上品さを意識した装いが喜ばれます。
▶母親
七五三で母親が着る着物は、家族写真の印象を大きく左右する大切なポイントです。
品格を保ちつつ、秋らしい華やかさを取り入れることで、晴れの日にふさわしい装いになります。
項目 | おすすめ | ポイント |
---|---|---|
着物 | 訪問着、付け下げ、色無地、紋付江戸小紋 | 控えめで品のある格を意識 |
色合い | 淡いグレー、薄紫、深緑など | 母親・子どもとの調和を大切に |
帯 | 袋帯(シンプルで上品な柄) | 格を保ちながら落ち着きを演出 |



▶祖母の着物
七五三では祖母も一緒に写真に写ることが多いため、落ち着きと上品さを意識した装いが喜ばれます。
母親や子どもの華やかさを引き立てる役割を意識すると、家族全体のバランスが整います。
項目 | おすすめ | ポイント |
---|---|---|
着物 | 訪問着、付け下げ、色無地、紋付江戸小紋 | 控えめで品のある格を意識 |
色合い | 淡いグレー、薄紫、深緑など | 母親・子どもとの調和を大切に |
帯 | 袋帯(シンプルで上品な柄) | 格を保ちながら落ち着きを演出 |



▶子どもの着物
七五三の主役である子どもの着物は、年齢によって装いが変わります。
季節を感じる柄を取り入れると、秋らしい家族写真になります。
年齢 | 着物の特徴 | 色・柄のポイント | 詳細ガイド |
---|---|---|---|
3歳(女の子) | 被布姿で可愛らしく動きやすい | 明るい色に花柄や兎など愛らしい文様 | 3歳七五三の完全ガイドはこちら |
5歳(男の子) | 羽織袴で凛々しい装い | 黒・紺・深緑が人気、金や白を差し色に | 5歳七五三の完全ガイドはこちら |
7歳(女の子) | 四つ身着物に帯を結んで振袖風に | 赤・水色など華やかな色柄、髪飾りで個性を演出 | 7歳七五三の完全ガイドはこちら |



秋の着物をもっと楽しむ豆知識

着物で過ごす秋をさらに快適に、そしておしゃれに楽しむためのちょっとした工夫をご紹介します。
細部に気を配ることで、着心地も見映えもぐっと良くなります。
襦袢・肌着の選び方
秋は朝晩と日中の寒暖差が大きいため、インナー選びが重要です。
季節 | おすすめ | ポイント |
---|---|---|
初秋(9月〜10月初旬) | 綿混の肌着、薄手の襦袢 | 暑さが残る時期でも快適に過ごせる |
晩秋(10月後半〜11月) | ウール混、厚手の襦袢 | 冷え込みに対応し、暖かさを確保できる |
共通の工夫 | インナーを調整 | 見た目は同じ着物でも快適さを保てる |
着付けの工夫
行楽や七五三で長時間過ごすときは、着崩れを防ぎつつ快適さを保つ工夫が役立ちます。
工夫のポイント | 内容 | メリット |
---|---|---|
腰紐をしっかり結ぶ | 動きやすさを残しつつ、緩まないように調整 | 歩いても着崩れしにくい |
伊達締め・補整 | 胴回りを安定させる | 抱っこや長時間の移動でも安心 |
羽織・ショールを活用 | 外出先で軽く羽織る | 防寒と着崩れカバーを両立 |
まとめ
秋は着物でのお出かけがぐっと楽しくなる季節です。
紅葉や実りの色をまとえば、歩くだけで季節の移ろいを感じられます。
七五三など大切な行事にも、母として、家族の一員として、心に残る装いを選びたいもの。
難しく考えすぎず、好きな色や小物で秋らしさを添えるだけで十分素敵です。
どうぞ気軽に、この秋の着物時間を楽しんでくださいね。
✿ コラム:Fumi’s Kimono Diary ✿
先日、紅葉を見に近くの公園へ着物で出かけてみました。
暑さも和らいで、澄んだ空気の中を歩くと、普段の散歩もなんだか特別な時間に。
帯揚げにからし色を合わせただけなのに、「秋らしいね」と声をかけてもらえてちょっと嬉しくなりました。
小さな工夫でも、着物は季節を映してくれるもの。
秋の色をひとつ取り入れるだけで、気分まで変わるのだと改めて感じたひとときでした。